- 問題文
- 文字
- パフラヴィー⽂字
- 問題形式
- 🔀対応付け 🔤文字
- 難易度
- ★★★★★★★
IOL2019-3 の攻略
ヒント 1
まずは問題文にある dīdan の 2 つの表記とその科学的翻字をよく観察し、知見を得る。
ヒント 1-1
科学的翻字の大文字と小文字の区別は無視してよい。ハイフンも無視してよい。つまり、HẔYTWN-tn' は hẕytwntn' と読み替えてよい。
転写は問 (c) まで使わないので一旦無視してよい。また、意味も(ほぼ)使わない。
ヒント 1-2
dīdan のヒントから、左端の縦棒 2 本と、その右にある縦棒の右上に小さな円がついた文字の読みに当たりをつける。
答え
右から左に書く。縦棒は n や ' の音を表す。縦棒の右上に小さな円がついた文字は、t を表す。
ヒント 2
単語 26 NKSWN-tn' が tn' で終わっているので、左端が HẔYTWN-tn' と同じ形になっているものを探す。
さらなるヒント
Q と W が該当する。どちらが正しいか。
答え
Q = 26 NKSWN-tn' 。先頭の文字が N なので、右端が縦棒のものを選ぶ。
ここから、「9」のような形をした文字が k の音になるとわかる。
ヒント 3
「9」のような字 k を手がかりに文責を進める。語末に k' がつく単語はたくさんあるが、語の途中に k が登場するものは少ない。
さらなるヒント
「9」のような字を語中に含むのは O と P 。対応しそうな科学的翻字は 13 gwklt' と 15 MLKTA 。どちらがどちらか。
答え
13 gwklt' は最後に ' がつくので、こちらが P 。よって O = 15 。
P = 13 から、左上に大きく伸びる文字が l を表すとわかる。
O = 15 じゃら、「6」のような文字が m を表すとわかる。
ヒント 4
l の文字を手がかりとして、マッチングを進める。l を 2 回含んでいる単語や、l で始まる単語を集め、これまでの知識に該当する対応関係を考える。
答え
AA = 23 、Z = 12 、BB = 21 、N = 34 などが決まる。
AA = 23 より、縦棒は n と ' に加え、w とも読むことがわかる。
ヒント 5
m の文字を手がかりとして、マッチングを進める。m で始まる単語を探す。
さらなるヒント
9 mwd と 22 mng が該当するが、「6」のような文字で始まる単語は O と V しかない。
答え
9 も 22 もともに V 。
小さくカールした文字は d や g と読むことがわかる。
ヒント 6
T の単語を考える。先頭が d か g であり、l や k を含む単語を探す。
答え
25 dlmnk' と 28 glmwk' が該当する。他の文字も既存の理解と矛盾しないので、T = 25 = 28 。
ヒント 7
これまでの知見から C 、E 、R 、S 、W の対応を決められる。
答え
C = 20 、E = 1 、R = 31 、S = 8 、W = 30 。
ヒント 8
B を考える。「S」のような字が 2 回現れるのに該当する選択肢を探す。
答え
B = 17 zwzk' 。
ヒント 9
D を考える。l と t を含み、その間に縦棒の字が挟まる選択肢。
答え
D = 5 blbwt' 。左下に大きく伸びている字は b だとわかる。
ヒント 10
z と b の字から、H と K と M がわかる。
答え
H = 27 、K = 7 、M = 16 。
ヒント 11
残る選択肢から、k を含むものを整理する。A 、I 、L と、10 gdk' 、11 hmyšk' 、32 dhšk' 。
答え
m を含むので L = 11 。長さから L = 10 、A = 32 。
ヒント 12
残る選択肢から、t を含むもの、l で終わるものに注目する。
答え
t を含むものから、Y = 4 。
l で終わるのは F と DD 。14 “wʾcʾl” 、18 “whʾl” 、33 “nhʾl” 。
非常にむずかしいが、“h” の一致を重視して F = 18 = 33 、DD = 14 。DD に含まれる「e」のような文字が、BB = 21 “LCDr’” に含まれていることから “c” とわかればわかる。
ヒント 13
29 ʾhlmn' を考える。“lm” を含む文字は T だけだが、“k” が入っているのでので矛盾する。U に注目。
答え
U は逆さまに、180 度回転して書かれている。lmn' が合致する。
「悪霊」は独特な書き方するらしい。これが問 (b) の答え。
ヒント 14
残る選択肢(2 、3 、6 、19 、24)を気合で対応させる。
答え
mを含むので G = 3 。lを含むので X = 19 。- 縦棒を 3 回含むので J = 24 。
- 2 と 6 は非常に困難だが、消去法で CC = 2 = 6 。(CC は全体がリガチャになっていて、分析するのが不可能に近い)
ヒント 15
問 (c) は、これまでの知見から音を推定したうえで、単語の転写(推定発音)を参考に、どの単語に対応するかを絞っていく。(科学的翻字の構成方法は未検討)
問 (d) は、知見を元に文字にしていく。
余談
IOL の全問題の中でも屈指の難問。
表記と読みが全く合わないことがあるのは、「訓読み」とのこと。
Wikipedia の「パフラヴィー語」の記事によると、パフラヴィー文字はアラム文字の変形で、もともとアラム語などを表記するために使われていた。中期ペルシャ語をパフラヴィー文字で書くとき、アラム語の単語を綴って中期ペルシャ語の単語として読んでいたらしい。例えば中期ペルシャ語で「王」発音は šāh だが、表記上はアラム語の「王」malkā を綴った MLKA のように書いた上で、読むときは šāh と発音していたとのこと(「訓読み」の記事)。
そして、科学的翻字の大文字と小文字はこの違いを表している。大文字はアラム語由来の部分、小文字は中期ペルシャ語の部分を表現するのに使い分けるらしい。
問題文の「見る」の例では、HẔYTWN-tn' の HẔYTWN の部分はアラム語由来、tn' は中期ペルシャ語の語尾、すなわち「送りがな」ということだと思われる。まさに「見る」の「見」が中国語由来、「る」が日本語由来という感じ。別表記である dytn' は、すべてひらがなで書いた「みる」に相当するのだろう。
問題を解くうえでは、科学的翻字の大文字と小文字の使い分けがわからないので、これらが文字自体の違いを表している可能性を考えてしまうと迷走してしまう。言われてみれば、大文字表記の単語は発音が全然合わず、小文字表記はおおよそ一致しているので、勘のいい人はわかるのかもしれない……。
「訓読み」も、強烈なリガチャだらけの文字も、どちらも面白い要素だけれど、ひとつの問題にされると厳しすぎるので、それぞれ別の問題として楽しみたかった気もする。