IOL2005-5 の攻略

問題文
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言語
Lithuanian
問題形式
🧩パターン
難易度
★★★★☆

問題の要約(参考)

リトアニア語には、強勢が付いたときに下降音調になる音節(ó)と、上昇音調になる音節(õ)の 2 種類がある。語根の音節や、格を表す語尾の音節はそれぞれ決まっている。活用によって音節の種類が変化することはない。

それと独立して、リトアニア語の強勢の位置は単語ごとに 4 種類のパターン(パラダイムという)がある。

  • 単数主格 líepo 、単数属格 líepos 、複数主格 líepos 、複数対格 líepaNs のように、活用によらず常に先頭の音節に強勢がつく単語。
  • 単数主格 rankó 、単数属格 rañkos 、複数主格 rañkos 、複数対格 rankáNs のように、単数属格と複数主格では先頭、それ以外では 2 番目の音節に強勢がつく単語。

このパラダイムは、かつては 2 つだったが、それぞれが 2 つに分裂して合計 4 つになったと考えられている。

  • 問 1:4 つのうち、どれがもともと同じだったか。
  • 問 2:もともとの 2 つは、どのような強勢のつき方だったか。
  • 問 3:分裂の法則を説明せよ。
ヒント 1

登場する単語のすべての音節について、種類(強勢がついたときに上昇・下降のどちらになる音節か)を特定する。

ヒント 1-1

登場する単語はすべて 2 音節。1 音節めが語根、2 音節めが格の語尾。

ヒント 1-2

要するに、語根の音節の種類は縦方向で全部同じ。語尾の音節の種類は横方向に全部同じ。

答え
  • 語根の音節:liep は下降、rank は上昇、galv は下降、žiem は上昇。
  • 語尾の音節:-o は下降、-os は上昇、-aNs は下降。
ヒント 2

もともとの 2 パラダイムを想定し、もっともシンプルな規則で 4 パラダイムに分けられる方法を考える。これを一気に考えてもよい。

以下は、もう少し論理的・段階的に考えたい人向けのヒント(でも実際には、こんな風に考えられる人は多くないような気がする)。

ヒント 2-1
  • liep-galv- は音節の種類が完全に一致しているが、パラダイム(強勢の付き方)が違う。
  • rank-žiem- も同様。

これはどう説明できるか。

答え
  • liep-galv- はもとから別のパラダイムだったと考えられる。
  • rank-žiem- ももとから別のパラダイム。
ヒント 2-2

liep-rank- が同じパラダイムだったか、liep-žiem- が同じパラダイムだったか。

同じパラダイムだったとして、強勢位置の変化が少ない方がもっともらしいと考える。

答え

liep-žiem- がもともと同じパラダイムだったとしたら、単数主格、単数属格、複数対格の 3 つが変化したことになる。さらに、rank-galv- のほうは単数属格と複数対格の 2 つが変化したことになる。

一方、liep-rank- がもともと同じパラダイムだったとしたら、単数属格と複数対格の 2 つが変化したことになる。さらに、galv-žiem- の方は複数対格だけが変化したことになる。

後者のほうが変化が少ないので、liep-rank- が同じパラダイム、galv-žiem- が同じパラダイムだったと考えられる。

ヒント 3

強勢位置が変わった 3 組を考察する。

  • líep(下降 + 強勢)-o(下降)と、rank(上昇)-ó(下降 + 強勢)。
  • líep(下降 + 強勢)-aNs(下降)と、rank(上昇)-áNs(下降 + 強勢)。
  • gálv(下降 + 強勢)-aNs(下降)と、žiem(上昇)-áNs(下降 + 強勢)。

あきらかに「下降・下降」だったら前者に強勢、「上昇・下降」だったら後者に強勢がついている。

もともと強勢位置が同じだったはず。もともと前者だったか、後者だったか。

ヒント 3-1

「下降 + 強勢」-「下降」が「上昇」-「下降 + 強勢」に変わったか、または「上昇」-「下降 + 強勢」が「下降 + 強勢」-「下降」に変わったか。

ヒント 3-2

他に「下降・下降」-「上昇・下降」にも関わらず強勢位置が変わっていない組がある。

答え

「下降 + 強勢」-「下降」が「上昇」-「下降 + 強勢」に変わったと考えられる。

仮に「上昇」-「下降 + 強勢」が「下降 + 強勢」-「下降」に変わったと考える。žiem(上昇)-ó(下降 + 強勢)なので、それに対応する galvogalv(下降 + 強勢)-o(下降)に変わるはず。しかし実際には galv(下降)-ó(下降 + 強勢)となっているので、説明できない。

これで復元されたパラダイムは、「常に先頭に強勢」と「単数なら 2 番目に強勢、複数なら先頭に強勢」の 2 種類で、とても規則的といえる。