- 問題文
- 言語
- イマス語
- 問題形式
- 📜ロゼッタ
- 難易度
- ★★★★★★
APLO2023-1 の攻略
ヒント 1
単語の構造を整理する。どのような prefix や suffix があり、どこが語幹か。
さらなるヒント
prefix の意味は簡単。suffix の意味は激難なので後回しにする。
答え
次のような構造になっている。
- prefix:
ant-
「~しかけた」/ta-
「~しなかった」/ ∅「~した」 - 謎の文字列
- 語幹
- suffix:
-t
/-rm
/-rum
ヒント 2
「謎の文字列」を書き出してひたすら眺め、ひらめきを待つ。
もしくは、よくある文法構造のパターンで分類してみる。
ヒント 2-1
na
が三人称単数を表すのは比較的容易にわかる(が、それほど役に立たない)。
ヒント 2-2
ŋkran
と ŋkra
と kra
など、分解できそうに見えなくもないが、これらは分解不可能。
ヒント 2-3
謎の文字列の中に毛色が異なるものが少数ある。
ヒント 2-4
-pa
や -pwa
で終わるものに注目し、それらが使われる条件を考える。
答え
自動詞、かつ ant-
も ta-
もついていないケースでは、次の prefix を使う。
kapa
「私たち二人」(文 4)kapwa
「君たち二人」(文 2)ipwa
「君たち全員」(文 9)na
「彼」(文 3)impa
「彼ら二人」(文 1)
以降では、これらの文は除外して考える。
ヒント 3
残った文の中で、共通点を探していく。
ヒント 3-1
ŋkra
を含む文の共通点は?(ŋkran
は除く)nan
を含む文の共通点は?kay
を含む文の共通点は?
答え
ŋkra
「私たち二人」nan
「君たち全員」kay
「私たち全員」
ヒント 3-2
na-
で始まる文が 3 つある(文 7 、15 、17)。これらの共通点は?
答え
ant-
も ta-
もつかない場合、na-
がつく。
ヒント 3-3
他の prefix の意味を、雰囲気で割り当てていく。どれもデータが 1 つずつしかないので、センスと思い切りが必要。
なお、すでに判明している語でも怯まずに割り当てる必要がある。「『私たち二人』はすでに ŋkra
と判明してるから違うかな……」などと考えてはいけない。
答え
ŋkran
「君たち二人」- 理由:文 11 は自動詞なので、他に考えにくい。
pu
「彼ら二人」- 理由:文 5 は自動詞なので、他に考えにくい。
kra
「私たち全員」- 理由:文 7 を見て、候補は「彼」か「私たち全員」だが、どちらを省略するかといったら「彼」。また、
ŋkra
が「私たち二人」とわかっているので、なんとなく似ている。
- 理由:文 7 を見て、候補は「彼」か「私たち全員」だが、どちらを省略するかといったら「彼」。また、
ŋkul
「君たち二人」- 理由:文 6 を見て、候補は「彼ら全員」か「君たち二人」。
ŋkra
やŋkran
を考えるに、ŋ-
で始まるのは「二人」っぽい。
- 理由:文 6 を見て、候補は「彼ら全員」か「君たち二人」。
kul
「君たち全員」- 理由:文 13 を見て、候補は「彼ら二人」か「君たち全員」で、
ŋkul
を「君たち二人」としたことから。
- 理由:文 13 を見て、候補は「彼ら二人」か「君たち全員」で、
ヒント 3-4
同じ人称を指す語が 2 つあるケースがある。
- 「君たち二人」
ŋkran
/ŋkul
- 「君たち全員」
nan
/kul
- 「私たち全員」
kay
/kra
これらの使い分けは?
答え
- それが主語の場合、
ŋkran
/nan
/kay
を使う - それが目的語の場合、
ŋkul
/kul
/kra
を使う
なお、ŋkra
だけは主語にも目的語にも使う(そのため、文 15 は曖昧になっている)。
ヒント 3-5
「謎の文字列」の意味は明らかになったが、主語と目的語のどちらか片方だけが表示されていることになる。
表示されない方はどのように表現されるのだろうか?
ヒント 3-6
主語と目的語のうち、表示されていない方を実際に洗い出してみるとよい。
ヒント 3-7
表示されていない方は、すべて三人称。
つまり、他動詞の主語と目的語は、少なくとも片方が三人称となっている。
答え
主語と目的語のうち、三人称でないほうが表示される。どちらも三人称の場合のみ、pu
が表示される。
「謎の文字列」をまとめると、次の通り。
- 自動詞、かつ
ant-
もta-
もつかない場合、主語の人称を次の prefix で示す。- 「私たち二人」:
kapa
- 「君たち二人」:
kapwa
- 「君たち全員」:
ipwa
- 「彼」:
na
- 「彼ら二人」:
impa
- 「私たち二人」:
- それ以外の場合、主語または目的語のうち三人称でない方を、次の prefix で示す。
- 「私たち二人」:
ŋkra
- 「私たち全員」:
kay
(主語の場合) /kra
(目的語の場合) - 「君たち二人」:
ŋkran
(主語の場合) /ŋkul
(目的語の場合) - 「君たち全員」:
nan
(主語の場合) /kul
(目的語の場合) - 「彼ら二人」:
pu
(自動詞で、主語が三人称の場合のみ)
- 「私たち二人」:
なお、他動詞で ant-
も ta-
もつかない場合、先頭に na-
をつける。
ヒント 4
最後に、suffix である -t
/ -rm
/ -rum
の使い分けを考える。
ヒント 4-1
これらの使い分けが現れるのは ant-
か ta-
がつく場合だけ。そうでない場合は常に -t
がつく。
ヒント 4-2
まだ表現方法が判明していないものがこれらで表現されている。
ヒント 4-3
他動詞における、主語または目的語の三人称である方の、単数・双数・複数がこれで表現されている。
答え
主語または目的語のうち、三人称であるものが
- 単数ならば
-t
- 「~二人」ならば
-rm
- 「~全員」ならば
-rum
なお、自動詞の場合は、人称にかかわらず主語の単数・双数・複数が表示される。
余談
データが 1 例しかない状態で勢いよく仮定を進める必要がある。それを恐れると、kapa
/ kapwa
/ ipwa
/ impa
の分解方法を探し始めるなどして深みにはまる。
とんでもなく高難度な問題だと思うが、Results では結構な人数がそれなりに解けているので、難易度 5 とした。
なお、「他動詞で ant-
も ta-
もつかない場合、先頭に na-
をつける」と言ったが、正確にはこれは自動詞の主語の na-
と同じ「彼」らしい。
解答によると、「一人称>二人称>三人称」という強弱関係があり、ant-
も ta-
もつかない場合、
- 主語と目的語のうち弱い方(データの他動詞文では必ず三人称なので常に
na-
) - 主語と目的語のうち強い方
- 語幹
- suffix
という語順になるらしい。ant-
か ta-
が付く場合は、主語と目的語のうち弱いほうが省略され、
ant-
またはta-
- 主語と目的語のうち強い方
- 語幹
- suffix
という語順になり、主語と目的語の片方は必ず三人称として解釈されるとのこと。
「私たち二人が君たち二人を~しかけた」など、主語と目的語がどちらも三人称でない場合の表現方法は謎のままなので、少しひっかかる。